「大開」駅から下町のような雰囲気のある道を10分ほど歩いて、インターナショナル
セワ ソサエティーさんの事務所に入ると、突然異国に来たような、でもなんだか懐かしい、そのような空間が広がっていました。

この日は、たまたま4人の子どもたち全員がネパール出身でしたが、インターナショナル セワ ソサエティーさんでは、日本語支援教室も行っており、ネパール人以外の子どもも受け付けているそうです。
以前は、固定の事務所がなく、様々な場所を借り、様々な場所で活動を行っていました。しかし、「子どもたちが、いつでも帰ってくることができる場所を作りたい。」という思いから、固定の事務所を持つことにしたそうです。
この日参加した4人の子どもたちが、この事務所に来るのは初めてだったようで、スタッフさんたちがお昼ご飯を振舞っていました。アットホームな温かい雰囲気で、とても楽しそうに話す子どもたちやスタッフさんの様子を見ていると、こちらも自然と笑顔があふれていました。

昼食を終え、数学の授業が始まりました。授業は、ニュアンスを伝えるために英語や日本語を織り交ぜている場面もありましたが、基本的にネパール語で進められていました。学校の授業は、日本語で進められます。子どもたちは学校での授業内容を理解したつもりでいるが、本当に理解はしていない、とプリタムさんは言います。本当の意味での理解をしてもらうために、あえて母語で授業は進めるのだそうです。
塾や予備校のような熱量で話すプリタムさんと、目の前の問題に懸命に取り組む子ども達。同じ課題に取り組んだり、それぞれ違う課題に取り組んだりと、それぞれに合った形で勉強に励んでいることが分かりました。
授業が終わり解散の時間が近づくと、子どもたちは「まだここにいたい。」とこぼしていました。
そんな子どもたちに、インターナショナル セワ ソサエティーのいいところを尋ねると、「楽しい。わからないことを先生が教えてくれる。」「学校のテストでいい点がとれた。」「みんな友達。」などと、少し恥ずかしそうに答えてくれました。
代表のラマ ゴレ プリタムさんは、現在の変化していく社会で子供たちが母文化も好きでいつつ、日本の文化の良いところも受け入れていってほしい、と言います。母語や母文化を忘れないことで、子どもたちが自分のルーツを知り、自分に自信を持って生きてほしい。来日後、何もわからなくて、「自分にはなにもできない、だめだ。」と、一度自信をなくしてしまったことのあるプリタムさんだからこそ、そのような強い思いがあるのだろうなあと感じます。
子どもたちが普段通っている学校では、子どもたちの周囲は日本人ばかりです。そして、その周りの日本人は、子どもたちから見ると、「自分よりも日本語ができて、勉強ができる子」です。だから、自分が分からないと思った問題を、「わからない」と学校の先生に自信を持って質問することができません。インターナショナル セワ ソサエティーという場所は、子どもたちにとって、勉強する場であると同時に、生き生きとした本当の自分を出すことができる場所なのだろうと思います。
プリタムさんは、「まだまだ力不足です。」という言葉を何度も口にしていました。3年後、子どもたちだけでなく、子どもたちの保護者を巻き込んだ自助コミュニティーシステムを作りたいと話します。子どもたちと向き合い、近くで関わっているからこそ、プリタムさんの中には、たくさんの課題が見えているのだと感じました。

インターナショナル セワ ソサエティーというあたたかい環境の中で、子どもたちはきっとプリタムさんが願う人物になるだろうと思います。
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