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兵家連メンタルヘルスセミナー2022にお伺いしました

2月9日木曜日、灘区文化センターにおいて(公社)兵庫県精神福祉家族連合会による「兵家連メンタルヘルスセミナー2022」が、14名の参加により行われました。

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このセミナーは「しみん基金・KOBE」などのいくつかの助成金を得て実施されています。精神疾患に悩む人々は400万人とも言われており、5大疾患の中でも最大の患者数を抱えている疾患です。この疾患は思春期に現れることが多く、誰にも言えずひきこもり状態になり、自殺者も増える現状があります。セミナーはご家族や支援者が、どのような対応が精神障害者の気持ちを和らげ、自身の病と向き合い、自立に繋がるかを学習すること。また参加者に精神医療・精神福祉の現在の施策・サービスについて最新の情報を提供することを目的としています。

本連続セミナーは以下のような構成で行われています

1回目87(日)から6回目112() 

精神障害者の家族のための介入プログラム

7回目29(木)当事者の権利擁護

8回目35(土)学校での精神保健福祉教育

 

精神疾患は昔、不治の病と言われていましたが、治療薬の開発により部分的な回復が可能になっており、現在は入院治療主体ではなく、地域で如何に生活するかに変わってきています。地域での生活のために、精神障害者との接し方(精神療法)が大きな重要技術となり、家族、支援者がそれを学ぶことが大切です。そこに、このメンタルヘルスセミナーの意味、目的があります。1回?6回では「認知行動療法」が取り上げられ、40名を超える参加者が集いました。

この日のセミナーは、8回に亘る連続セミナーの第7回目にあたります。今回は「当事者の権利擁護」について、大阪精神医療人権センターの有我譲慶氏による熱のこもった講演が行われました。有我氏は看護師として、精神医療の現場で働くうちに、患者の自由を奪い基本的人権すら制限される現実に驚くとともに違和感を覚え、精神障害者の権利を擁護する活動を始めました。強制入院に頼らず、隔離・身体拘束をしないで地域精神保健医療にシフトしたイタリア・トリエステでの実践現場を視察し、まさに目からうろこが落ちたと思ったそうです。

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講演では、OECD諸国との比較における日本の精神医療の現状について様々な統計が示されました。以下、その中から印象に残った数値について記します。

OECD38か国の総精神科病床数の37%が日本に存在しています。諸外国では精神科の病棟は国の管轄であるため、地域精神保健医療にシフトしやすいのです。ところが、日本の病院行政は民間任せのため、経営のために入院患者数を確保しておく傾向が強く、しかも一人の医師による診断のみで入院措置が決められてしまいます。

人口1000人あたりの精神科病床数はOECD平均が0.6床のところ、日本は2.6床(20182021)と、病床数の割合も大きいことがわかります。また、平均在院日数もOECD31.2日のところ、日本は277日という数字が示されており、日本における人口あたりの強制入院者数は、ヨーロッパ平均の約14倍という数値です。

また、日本の精神医療現場で行われている隔離・身体拘束が増加傾向にあることも懸念されます。このような中、近年複数の精神病院での虐待事件が発覚しています。コロナ禍におけるクラスター発生も深刻です。よく言われることですが、パンデミックで最も大きな被害を受けるのは社会的弱者です。この度のコロナ禍であぶりだされたのは日本の精神保健医療の根本的構造的な問題ではないでしょうか。

精神障害者の精神病院への収容主義こそが問題なのです。病床を計画的に削減し、退院を促進するとともに医療人員を地域医療の担い手とし、人間の尊厳を軸とした地域精神保健に転換すべきと考えます。

このような状況の中、2022年9月9日、国連障害者権利委員会から日本政府に対して勧告が(総括所見)出されました。

障害者権利委員会から日本政府へ勧告(総括所見)が出されました! ?90項目以上改善するよう勧告されています | DPI 日本会議 (dpi-japan.org)

なお、講演の冒頭で紹介された「精神疾患とは?」の問いに、とても印象深い引用があったので以下に記します。

だれも病人でありうる、たまたま何かの恵みによっていまは病気でないのだ。医者が治せる患者は少ない。しかし看護できない患者はいない。安定した看護、治療、相談は「守秘義務をもった他人」だけができる。―中居久夫「看護のための精神医学」

統合失調症とは、過酷な現実から事項を守ろうとする決死の努力 ―R.D.レイン「引き裂かれた自己:狂気の現象学」

 

【精神疾患の特徴・予防・回復】を解説した高校の保健体育の教科書発刊

(公社)兵庫県精神福祉家族連合会は国に対して、長年、精神疾患についての教育を学校で始めて欲しいと訴え、メンタルヘルスセミナー等でも啓発活動を続けていました。そして令和4年度、ついに高校の教科書に【精神疾患】についての詳しい説明が記載されました。なお、これは第8回の講座で取り上げられるテーマです。


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